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譲位と退位の違い。法律の話

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 4月30日、上皇陛下が、天皇の位を退位されました。
 その際、譲位と退位の言葉が飛び交いました。この2つの違いは、法律上、重要な違いになります。

 天皇陛下は、法律上、ご自身の意思で、天皇の位を皇太子殿下に譲ることができません。皇室典範に譲位に関する規定がないためです。
 その上、天皇陛下は憲法4条の規定より「譲位できるようにする法律を制定して欲しい」という政治が絡む要望を述べる事もできません。

 憲法4条「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。」

 上皇陛下が退位されるキッカケになりました3年前の夏のビデオメッセージでは「このままでは天皇の職務が続けられるかどうか不安になる」といった形で、ギリギリの表現で、ご心境を述べられていました。
 象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば:象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば(ビデオ)(平成28年8月8日) – 宮内庁

 上皇陛下のビデオメッセージで、政府が動いて、退位に関する特別法が制定され、生前退位になりました。
 天皇の退位等に関する皇室典範特例法について(首相官邸)

 形式的に、上皇陛下のお気持ちを忖度した政府が、天皇陛下を退位させる法律を制定したという物になります。
 そのため法律上、天皇陛下自らの意思で位を譲る「譲位」ではなく、自分の意思を含まない意味の「退位」という言葉になります。

 ところで、上皇陛下のビデオメッセージで「天皇が健康を損ない,深刻な状態に立ち至った場合,これまでにも見られたように,社会が停滞し,国民の暮らしにも様々な影響が及ぶことが懸念されます。更にこれまでの皇室のしきたりとして,天皇の終焉に当たっては,重い殯の行事が連日ほぼ2ヶ月にわたって続き,その後喪儀に関連する行事が,1年間続きます。その様々な行事と,新時代に関わる諸行事が同時に進行することから,行事に関わる人々,とりわけ残される家族は,非常に厳しい状況下に置かれざるを得ません。こうした事態を避けることは出来ないものだろうかとの思いが,胸に去来することもあります。」がありました。

 実際、昭和から平成になった時、昭和天皇崩御のため、日本中が喪に服し、沈んだ雰囲気になりました。
 でも、今回は日本中が明るい雰囲気で、令和を向かえることができました。上皇陛下が国民を想うお気持ちには胸を打つものがありますね。

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