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デマの被害者・李陵の家族と司馬遷。漢帝国の話
先週、トイレットペーパーが売り切れ続出の事態になりました。
「トイレットペーパーが中国で製造されている」や「マスク増産のためトイレットペーパーの材料がなくなる」といったデマがネットに流れたためです。
デマだとわかっていても、品薄になる不安から買い付けに走る。人間心理を悪用したデマとしかいいようがないですね。
今から2100年前、中国大陸では漢帝国と匈奴(北方騎馬民族の国)が激しい戦いを繰り広げました。
その時、漢の将軍だった李陵が匈奴の捕虜になりました。ここからデマが発生しました。
李陵が匈奴に寝返ったというデマです。それを信じた武帝。李一族を抹殺しました。
この時、李陵の友人だった司馬遷は「彼は寝返る人物ではない」と訴えました。しかし、それが武帝の逆鱗に触れ、去勢させられました。
宦官となった司馬遷。恨みをエネルギーに転化させたかどうかわかりませんが、執筆途中だった歴史書・史記を、全精力をかけて書きあげました。
ただ、殷の時代を記した「殷本紀」は、司馬遷の時代から1000年も前な上、発掘された甲骨文字の記録と食い違いが見られます事から、殷本紀の内容の信憑性が低いというのが現在の見方です。
当時、匈奴には文字で記録するという習慣がなかったようです。(将来、文字が書かれた書簡が発掘されるかもしれませんが)
そのため現在でも匈奴の事を知るには、文献資料として史記をはじめとした漢側の記録が頼りになっています。
ところで司馬遷をはじめ、漢帝国は匈奴の情報が得られたのか。
漢帝国の高官が匈奴に投降する一方で、匈奴の高官が漢帝国に投降する場合もあり、お互いがお互いの情報を知っていたようです。
「匈奴」という漢字ですが、恐ろしい奴という意味があります。漢民族は、匈奴に対して、相当、脅威を感じていた事が伺えますね。
デマのために損失があったり、場合によっては、人命が失われる事があるかもしれません。
それだけにデマに踊らされないように、冷静に対応していきたいですね。