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科学は難しいですね。

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 2014年1月29日は、理化学研究所が「STAP細胞」を発表した日です。
 その後、世間をお騒がせした話に発展していきましたが、その話になりますとワイドショーネタになってしまいます。
 そこで今日は違った観点の話を書く事にします。

 私事で恐縮ですが、理化学研究所に知り合いがいます。そして他の研究機関にも知り合いがいます。
 研究者の知り合いから聞きました興味深い話を紹介します。

 STAP細胞発見は、ネイチャーという世界的な科学論文誌に投稿されました。
 私のような一般人ですと「世界的な論文誌」という言葉を聞いただけで「凄い」と思います。
 しかし理化学研究所では、ネイチャーへの投稿は日常茶飯事のため、凄いという意識はありません。その話を聞きまして意外だと思いました。
 もちろん、理化学研究所が世界的な研究機関で、ネイチャーへ投稿できるだけの素晴らしい人材を揃っている証拠でもありますが。

 STAP細胞論文ですが、データの改ざん問題が出ました上、STAP細胞生成実験が再現できなかったため、STAP細胞の存在は、現時点で確認できなかったとなりました。
 そのため世界的な雑誌にデタラメな論文を載せたことで、世間から非難を浴びました。データの改ざんという行為は信用の失墜という大きな問題になります。
 ただ、データの改ざんは別にしまして、ネイチャーに掲載された論文が全て正しいわけではありません。掲載後、他の研究者の追試などによって否定された論文も数多くあります。
 私のような一般人ですと「どうして正しくない論文が認められるのだ」とか「審査員は見抜けないのだ」と思ってしまいがちです。

 しかし、以下の事を聞きましてハッとさせられました。「未知の発見は、審査員にとっても未知の分野」
 そのため審査員は実験やデータについて、審査員が持っている知見の範囲で、問題点や不備な点の指摘を行えても、審査員の知見を超える場合は、正しいかどうかの判定は困難です。

 そして発表内容が正しいかどうか判断できないからといって切り捨てるのは、別の問題も引き起こします。
 アインシュタインの特殊相対性理論ですが、発表されたのは1905年です。当時3人しか理解できなかった上、特殊相対性理論が正しいかどうか、実験的に検証はできませんでした。
 他にも若き研究者が発表した内容が、当時の大御所に理解されずに埋もれた例は数知れずあります。フランスの数学者・ガロアが典型例です。

 そして研究機関の知人は「論文誌は、平たく言うと同好会誌と同じだよ。研究発表の場だよ」と言っていました。
 研究者を信じるという前提で審査を行っています。「私は、こういう角度で観測したら、○○という現象が出た。何度も追試しても同じだった。△△だと思われる」という結果発表の場です。
 その論文を読んだ他の研究者が同じように再現実験を行って確認したり、違った方法で観測して、因果関係を調べたりしています。

 これらの話を聞きますと、科学的発見を確実な物にするには、多くの積み重ねが必要だという事が感じられますね。

 誰でも知っています有名な研究者で、生前の業績で、死語、その業績がことごとく否定された人物がいます。1000円札の野口英世です。
 家は貧しく、しかも赤ちゃんの時に手を大やけどしながらも、苦学の後、世界的研究者に上り詰めました。そして研究への情熱は凄いため、人々を感動させ、現在の評価につながり、お札にもなっています。
 ただ、その一方でデータの改ざんが行われてたのではないかという疑惑もありますが、今となっては真相は謎です。

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